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    プレスリリース

    シリコン負極表面を高度に安定化するポリ(ボロシロキサン)型人工SEIの開発に成功

    シリコン負極表面を高度に安定化する
    ポリ(ボロシロキサン)型人工SEIの開発に成功

    ポイント

    • リチウムイオン2次電池のシリコン負極表面の劣化を抑制する人工SEIの開発に成功した。
    • 350回の充放電サイクル時點で、ポリ(ボロシロキサン)をコーティングしたシリコン負極型セルは、PVDFコーティング系と比較して約2倍の放電容量を示した。
    • 本人工SEIの好ましい特性の一つは自己修復能にあることがSEM測定から明らかになった。
    • 充放電サイクル後に、本人工SEIを用いた電池系ではPVDF系と比較して大幅に低い內部抵抗が観測された。
    • LiNMCを正極としたフルセルにおいても、ポリ(ボロシロキサン)コーティング系電池セルはPVDF系と比較して大幅に優れた性能を発現した。
    • 低いLUMOによりポリ(ボロシロキサン)のコーティング層は初期サイクルで一部還元され、同時にリチウムイオンを含有した好ましいSEIを形成する。
    • ヘキサンなどの低極性溶媒にも可溶であり、多様な系におけるコンポジット化、成膜に対応性を有している。
     北陸先端科學技術大學院大學 (JAIST) (學長?寺野稔、石川県能美市)の先端科學技術研究科 物質化學領域松見 紀佳教授、博士後期課程學生(當時)のサイゴウラン パトナイク、テジキラン ピンディジャヤクマールらは、リチウムイオン2次電池*1 におけるシリコン負極の耐久性を大幅に向上させる人工SEI材料の開発に成功した(図1)。
     リチウムイオン2次電池負極としては多年にわたりグラファイトなどが主要な材料として採用されてきたが、次世代用負極として理論容量が極めて高いシリコンの活用が活発に研究されている。しかし、一般的な問題點としては、充放電に伴うシリコンの大幅な體積膨張?収縮によりシリコン粒子や表面被膜の破壊が起こり、さらに新たなシリコン表面から電解液の分解が起き、厚みを有する被膜が形成して電池の內部抵抗を低減させ放電容量の大幅な低下につながっていた。本研究では、自己修復型高分子ポリ(ボロシロキサン)をコーティングすることにより、シリコン表面が大幅に安定化することを見出した。
     コーティングを行っていないシリコン負極、PVDFコーティングしたシリコン負極、ポリ(ボロシロキサン)コーティングしたシリコン負極をそれぞれ用いたコインセルのサイクリックボルタンメトリー測定*2 を比較すると、ポリ(ボロシロキサン)コーティングを行った系においてリチウム脫挿入ピークの可逆性が大幅に改善された。これは、ポリ(ボロシロキサン)の低いLUMOレベル*3 により初期の電気化學サイクルにおいてコーティング膜が一部還元されることにより、リチウムイオンを含有した好ましいSEIを形成した結果と考えられる。ポリ(ボロシロキサン)コーティングを行ったシリコン表面に傷をつけた後、45℃におけるモルフォロジーの経過をSEM観察したところ、30分以內に傷が修復される様子が確認された(図2)。
     このようなポリ(ボロシロキサン)の自己修復能力の結果、アノード型ハーフセルの充放電試験においてポリ(ボロシロキサン)コーティング系はPVDFコーティング系と比較して350サイクル時點で約2倍程度の放電容量を示した(図3)。また、充放電サイクル後のインピーダンス測定より、好ましい界面挙動*4 によるポリ(ボロシロキサン)コーティング系の內部抵抗の低下が示された。
     また、LiNMCを正極としたフルセルについても検討したところ、ポリ(ボロシロキサン)コーティング系はPVDFコーティング系と比較して大幅に優れた性能を示した。例えば、30サイクル終了時點でのポリ(ボロシロキサン)コーティング系の放電容量はPVDFコーティング系の約3倍に達した。

     本研究は、科學技術振興機構(JST)未來社會創造事業の支援を受けて行われた。

     本成果は、「ACS Applied Energy Materials」(米國化學會)オンライン版に1月19日に掲載された。

    題目 Defined Poly(borosiloxane) as an Artificial Solid Electrolyte Interphase Layer for Thin-Film Silicon Anodes
    著者 Sai Gourang Patnaik, Tejkiran Pindi Jayakumar, Noriyoshi Matsumi
    DOI 10.1021/acsaem.0c02749

    【今後の展開】

     自己修復能以外の他のメカニズムによりシリコンを安定化する他系との組み合わせにより相乗効果が大いに期待される。
     更なる改良に向けた分子レベルでの構造改変により高性能化を図る。
     電極―電解質界面抵抗を大幅に低減できる各種電極用高分子コーティング剤として、リチウムイオン2次電池のみならず広範な蓄電デバイスへの応用が見込まれる。

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    図1.ポリ(ボロシロキサン)及び関與する相互作用

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    図2.ポリ(ボロシロキサン)によるシリコン表面の自己修復

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    図3.アノード型ハーフセルの充放電挙動の比較

    【用語解説】
    *1 リチウムイオン2次電池:
    電解質中のリチウムイオンが電気伝導を擔う2次電池。従來型のニッケル水素型2次電池と比較して高電圧、高密度であり、各種ポータブルデバイスや環境対応自動車に適用されている。
    *2 サイクリックボルタンメトリー(サイクリックボルタモグラム):
    電極電位を直線的に掃引し、系內における酸化?還元による応答電流を測定する手法である。電気化學分野における汎用的な測定手法である。また、測定により得られるプロファイルをサイクリックボルタモグラムと呼ぶ。
    *3 LUMO:
    電子が占有していない分子軌道の中でエネルギー準位が最も低い軌道を最低空軌道(LUMO; Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と呼ぶ。
    *4 電極―電解質界面抵抗:
    エネルギーデバイスにおいては一般的に個々の電極の特性や個々の電解質の特性に加えて電極―電解質界面の電荷移動抵抗がデバイスのパフォーマンスにとって重要である。交流インピーダンス測定を行うことによって個々の材料自身の特性、電極―電解質界面の特性等を分離した成分としてそれぞれ観測し、解析することが可能である。

    令和3年1月26日

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